ツーリング動画が劇的に変わる|物語を作る撮影設計テンプレート

- 撮影の考え方を知る(いま読んでいる記事)
- 1カット10秒以内で撮る
- ツーリング30秒ムービーを作る
この3つを実践すると、景色だけに頼らない「物語のある短編ツーリング動画を作れるようになります
あなたのツーリング動画が「単調でつまらない」と感じてしまう原因は、実は撮り方ではなく“撮る前の設計”にあるかもしれません。
どれだけ綺麗な景色を撮っても、編集の段階で「なんだか同じカットばかり」「最後まで見応えがない」
実はそれ、”撮影設計”ができていないことが原因です。
撮影設計とは動画の台本のようなもの。
これがあると撮るべきカットがあらかじめ分かっているので撮り逃しがなく、必要なカットのみ撮ることになるので編集が楽になります。
景色のいいところで漠然とRECボタンを押して、編集時になんとかしようとするのではなく、「意図」を持って撮影すること。
「このカットは動画のこのシーンで使う」というのが後から見返したときにも思い出せるような撮り方をすることが重要です。
そのためには、ツーリングに出発する前に、ある程度の動画の構成(流れ)を想定しておく必要があります。
「ツーリングが始まってもいないのに、動画の構成なんて考えられるの?」と思うかもしれません。でも、よく考えてみてください。あなたのツーリングには毎回何かしらの「テーマ」があるはずです。
本記事では、そのための撮影設計の考え方と手順を解説します。
ツーリング前の構成づくりから、実際の撮影に繋げるステップまで、実際のサンプル動画も交えながら説明します。
本記事は、「バイク旅を”物語”に変える映像術|撮影・編集を体系的に学ぶ完全ガイド」基礎編のNo.1となっています。
No.2,No.3を読むことで誰でもいい感じのツーリング30秒ムービーが作れるような構成になっているので、こちらも読んでみてください。
基礎編No.2

基礎編No.3

動画がつまらない2つの原因
動画を見返して「何か物足りない」「退屈だな」と感じてしまう原因は、大きく2つあります。
原因1:同じカットの連続
バイク乗車中の美しい景色を何カットも映しても、視聴者は「同じ状況が続いている」と認識してしまいます。
現地にいるあなた自身は、その美しい景色をいつまでも見ていたいと思うでしょう。でも画面越しに見る視聴者は、数秒見れば満足してしまうのです。
また、同じ視点から、同じ構図で、同じ被写体を映し続けても、「同じ状況」が何度も繰り返されるだけで、退屈な動画になってしまいます。
具体例:
- 車載カメラからの走行映像が5分続く
- 同じ角度からの景色のカットが何度も登場する
- バイクの真後ろからの映像ばかり
これらはすべて「変化がない」ため、視聴者の興味を引き続けることができません。
原因2:何を見ればいいかわからない
走行映像と景色の映像をただ繋げただけでは、視聴者からすると「何を伝えたいのかわからない」状態になってしまいます。
結果として、見終わった後に何も印象に残らない動画になってしまうのです。
これは映画やドラマを思い浮かべるとわかりやすいでしょう。ストーリーの流れや起承転結がなく、ただシーンが羅列されているだけでは、観ている側は何を感じればいいのかわからなくなります。
撮影設計に必要な「コンセプト」
動画のコンセプトを決める
つまらない動画になってしまう原因を解決するには、「誰に何を伝えるか」という動画の「コンセプト」を決めることが第一歩です。
コンセプトが決まれば、それに沿って撮るべきカットを当てはめていくことができます。
大まかに撮るべきカットが想定できている状態でツーリングをスタートすれば、ただ長回しするのではなく、「このシーンで使いたいからここを撮る」という明確な意図を持って撮影できます。
撮るべきカットが事前に決まっているので、撮り逃しもなく、編集作業もスムーズに進められるのです。
コンセプトの具体例
コンセプトは難しく考える必要はありません。「こんなツーリングに行きたい」と思った気持ちを言葉にするだけです。
例1:日常からの小さな脱出
「休日の朝、いつもの湖へ。自然の中でリフレッシュする」
- 視聴者:忙しい日常を送る人、気軽なツーリングを楽しみたい人
- 伝えたいこと:日常からちょっと抜け出す心地よさ、バイクで走ること自体の楽しさ
例2:特別な瞬間を求める旅
「紅葉の人気スポットへ。朝露に濡れた葉に朝日が差し込む幻想的な景色を見に行く」
- 視聴者:絶景を求めるライダー、写真や映像が好きな人
- 伝えたいこと:特別な瞬間に立ち会う感動、早起きしてでも行く価値がある美しさ
30秒動画から始める基本構成
まずは作りやすく、かつ見られやすい30秒のショートツーリング動画を作ることをゴールにしましょう。
どんなコンセプトでも共通する基本構成
出発 → 移動 → 目的地 → 余韻 → 締め
この5つのパートが、物語として成立する最小単位です。
ここから、コンセプトによってどの部分を「厚く」するかが変わってきます。実は、ツーリングの実際の工程を分解してみると、どこを厚くすべきかが自然に見えてくるのです。
例1の場合:日常からの小さな脱出
コンセプト:休日の朝にいつもの湖へ、自然の中でリフレッシュする
このツーリングでは、バイクで走ること自体や、途中で寄るお気に入りのパン屋さんも大切な目的の一部です。
カット割の配分:
- 出発(10%):朝の準備、バイクにまたがる
- 移動(35%):気持ちいい走行シーン、パン屋での購入
- 目的地(35%):湖畔での朝食、自然の中でくつろぐ
- 余韻(10%):満足げな表情、パッキング
- 締め(10%):帰路の夕焼け
「移動」と「目的地」の比重が多めになります。
例2の場合:特別な瞬間を求める旅
コンセプト:紅葉の人気スポットへ、朝露に濡れた葉に朝日が差し込む幻想的な景色を見に行く
このツーリングでは、夜明け前に出発するため「出発」は省略可能。代わりに移動中の日の出を始まりのカットにできます。目的は幻想的な紅葉の風景と、その雰囲気に包まれている自分とバイクです。
カット割の配分:
- 出発(0%):省略、または暗闇の中のシルエット程度
- 移動(20%):夜明けの空、日の出
- 目的地(50%):紅葉の風景、木々のディテール、光の演出
- 余韻(20%):静寂の中でコーヒーを飲む、バイクと紅葉
- 締め(10%):去りゆくバイクの後ろ姿
「目的地」と「余韻」の比重が多くなります。
このように、ツーリングのコンセプトをもとに実際の行程を分解していけば、カット割は自然と決まってきます。
事前に決めておくのはこれくらいで十分です。ここまでできていれば、必要なカットがわかり、撮り逃しすることがありません。
予定外の展開に備える:定番ショット集
コンセプトを決めて撮影すれば撮り逃しは防げますが、ツーリングは予定通りに進まないこともあります。
途中で予定が変わったり、思っていたのと全然違うツーリングになることも。それもツーリングの醍醐味です。どこへでも行けるバイクだからこそ、そんな自由さがあっていい。
そんなときに、後から動画を再構成するときに使いやすいカットを撮っておくことで、予想外の変更にも対応できます。
特に長期のツーリングでは、複数の動画に分けることもありますし、予定通り行かないことの方が多いでしょう。
僕が必ず撮るようにしている定番ショット
- その日の空
→ 時間の流れとツーリングの空気感を伝える最強の素材。 - 出発シーン
→ エンジン始動やヘルメット装着など、「旅の始まり」を感じさせるカット。 - ヘルメット視点のバイクと景色
→ 視聴者が自分も走っているような没入感を得られる。 - 開けた道路とアスファルトのディテール
→ 路面の質感や光の反射が“走る感覚”を表現する。 - バイクのディテール
→ タイヤやエンジン音など、バイクの存在感を伝える“相棒カット”。 - 休憩シーン
→ 一息つく表情が入るだけで、動画に“人間味”が生まれる。 - 到着・出発の境界
→ サイドスタンドを立てる・走り去る。シーンの区切りを自然に作れる。
これらのショットは、コンセプトに関係なく使える「つなぎ」の素材として非常に役立ちます。
実践を重ねて身につく「勘所」
動画を撮るツーリングは、撮らない時よりも時間がかかります。
いつもなら目的地でとりあえずRECボタンを押していただけですが、出発から帰宅まで、複数のタイミングで意識的に撮影しなければならないからです。
最初は、撮り忘れてしまうシーンがあったり、適当に撮ってしまって結局後から使えない素材になってしまうこともあるでしょう。
最初は誰しもうまくいきません。何度も繰り返してようやく「勘所」——どこで何を撮ればいいかの感覚——がわかってきます。
最も大切なこと:1本の動画を完成させる
編集を完遂する前に撮影の練習ばかりしていても、それは机上の空論を実践しているだけで、遠回りになってしまいます。
「撮って編集、撮って編集」を繰り返す。
これが「いい動画」が作れるようになる最短距離です。
編集してみて初めて、「ここのカットが足りなかった」「この角度では使いにくかった」「もっと長く撮っておけばよかった」といったことに気づけます。その気づきを次のツーリングに活かす。この繰り返しです。
完璧を目指して撮影練習を重ねるより、60点でもいいからまず1本完成させること。その経験が次の80点、そして100点へとつながっていきます。
まとめ:編集を意識した撮影で物語を作る
ツーリング動画を物語のように仕上げるための撮影のポイントをまとめます。
- コンセプトを決める:誰に何を伝えたいかを明確にする
- 基本構成を押さえる:出発→移動→目的地→余韻→締め
- どこを厚くするか考える:ツーリングの目的に合わせて配分を変える
- 定番ショットを押さえる:予定外の展開にも対応できる
- 実践を重ねる:撮って編集を繰り返して「勘所」を身につける
「編集を意識して撮影する」——このマインドセットがあれば、編集作業がグッと楽になり、完成度の高い動画を作れるようになります。
さあ、次のツーリングでは、ぜひこのテンプレートを使って撮影してみてください。きっと、今までとは違う「物語」が生まれるはずです。
- 撮影の考え方を知る(いま読んでいる記事)
- 1カット10秒以内で撮る
- ツーリング30秒ムービーを作る
この3つを実践すると、景色だけに頼らない「物語のある短編ツーリング動画を作れるようになります