バイク旅×映像制作:中級編

「寄りのショット」で映像に緩急をつける|撮影アイデア集【2025年版】

Rantaka
記事内に商品プロモーションを含む場合があります

ツーリング動画の撮影にも慣れてきて、旅の記録を一本の動画にまとめることもできるようになった。

でも、なぜか完成した動画はどこか平坦で、”素人感”が抜けない…。

「どこを走って、何をしたか」という情報は伝わるのに、旅の感動や空気感が伝わってこない。

もしあなたがそう感じているなら、原因は視点がずっと同じことにあるのかもしれません。

スポンサーリンク

なぜ「寄り」がないと単調に見えるのか?

そもそも、なぜ「引き(ワイド)」の映像ばかりだと単調に見えてしまうのでしょうか。

それは、映像から「情報量の変化」が失われるからです。

ずっと同じ画角で撮られた走行シーンは、いわば「時速60kmで流れる風景」という均一な情報が続いている状態です。視聴者はすぐにそのスピード感と情報量に慣れてしまい、刺激を感じなくなります。

物語に起承転結があるように、音楽に静かなパートと盛り上がるパートがあるように、映像にも情報の「密」と「疎」、つまり緩急が必要です。

「寄りのショット」は、この緩急を生み出すための最も効果的なスイッチなのです。

「寄りのショット」がもたらす3つの効果

では、具体的に「寄りのショット」は映像にどのような効果をもたらすのでしょうか。

効果1:映像に「リズム」が生まれる

疾走感のある走行シーン(引きの画)の合間に、エンジンの一部分を切り取ったような「寄り」のショットを数秒間挟むとどうでしょう。

流れていた景色がピタッと止まり、視聴者の視線は一つのディテールに集中します。これは音楽におけるブレイク(無音)や、文章における「改行」と同じ効果を持ちます。

この一瞬の「静寂」や「間」があるからこそ、次の走行シーンの疾走感がより際立つのです。「動」と「静」のコントラストが生まれ、映像全体に心地よいリズム感が生まれます。

効果2:五感を刺激する「質感」が伝わる

「寄りのショット」は、言葉やナレーション以上に雄弁に、その場の質感や空気感を伝える力を持っています。

例えば、

  • タイヤのトレッドについた砂粒 → さっきまで走っていたダート道のザラザラとした感触
  • ヘルメットのシールドを流れる雨粒 → 冷たい雨の中を走り抜けてきた過酷さ
  • 熱で陽炎が立つエキゾースト → 夏の猛烈な日差しと、エンジンの熱気

ただ「オフロードを走った」「雨に降られた」と説明するのではなく、「寄り」のショットは視聴者の記憶や感覚に直接訴えかけます。視聴者はその映像から、匂いや温度、手触りまで想像し、より深くあなたの旅に没入してくれるのです。

効果3:物語の「解像度」を上げる

キーを回す手元、メーターの針が振り切れる動き、ミラーに一瞬映る自分の顔。

こうした「寄り」のショットは、単なるディテールではありません。一つひとつが、旅の始まりの期待感や、道中のふとした感情といった「小さな物語」を内包しています。

Aロール(主役の映像)が物語の「あらすじ」だとすれば、Bロールである「寄りのショット」は、登場人物の細かな表情や情景描写です。

これらのディテールが積み重なることで、あなたの旅という大きな物語の「解像度」がグッと上がり、視聴者はより強い共感と感情移入を覚えてくれるのです。

あわせて読みたい
バイクツーリング動画のBロール撮影 | 「余白」を足してワンランク上の仕上がりにする方法【2025年版】
バイクツーリング動画のBロール撮影 | 「余白」を足してワンランク上の仕上がりにする方法【2025年版】

【実践編】何を「寄って」撮るべきか?撮影アイデア集

理屈は分かっても、いざ撮るとなると思いつかないもの。

ここでは、次のツーリングからすぐに使える「寄りのショット」の撮影アイデアをカテゴリー別にご紹介します。

① バイクのディテール

旅の相棒であるバイクは、物語の宝庫です。

  • 出発前: キーを差し込み回す手元、イグニッションONで動くメーター、ブルっと震えるミラー
  • 走行後: 熱気で揺らめくエキゾースト、泥や虫で汚れたフロントフォークやヘッドライト
  • 情景: タンクに映り込む空や夕日、煌めくヘッドライトの光、シートについた雨粒

② ライダーのアクション

ライダー自身の何気ない行動も、最高の被写体になります。

  • グローブをはめる・外す手元
  • ヘルメットのシールドを開閉する瞬間
  • ジャケットのジッパーを上げる動き
  • 缶コーヒーのプルタブを開ける指先
  • スマートフォンで地図を確認する画面

③ 旅先のディテール

その土地の空気感を切り取ることで、映像はさらに豊かになります。

  • 道端に咲いている一輪の花
  • 歴史を感じさせる古い道標や看板
  • 神社の手水舎から流れ落ちる水
  • 休憩で立ち寄ったカフェのコーヒーカップ
  • 路地裏で出会った猫のあくび

【ワンポイント・アドバイス】
 最初から完璧を目指す必要はありません。まずは「次のツーリングでは、バイクのディテールに関する寄りのショットを3つ撮る」といったように、小さな目標を立てて臨むのがおすすめです。

まとめ:視点を変えれば、映像が変わる。

今回は、単調な動画から脱却するための「寄りのショット」について解説しました。

「寄り」で撮るということは、単にズームすることではありません。それは、旅の解像度を上げるための「視点」そのものです。

今まで素通りしていた道端の草花、当たり前に操作していたバイクのスイッチ、何気なく飲んでいたコーヒー。 Bロールを撮るために一度立ち止まり、さらに「寄りの視点」を持つことで、あなたの世界は今まで以上に面白く、発見に満ちたものに変わるはずです。

その新しい発見の一つひとつが、あなたの映像を、そして旅そのものを、もっと深く、もっと面白くしてくれます。

まずは、あなたのバイクの一番好きなディテールを、思いっきり「寄って」撮ることから始めてみませんか?

こだわりのギアはこちらから

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT ME
ランタカ
ランタカ
バイク旅動画クリエイター / ブログ運営者
Youtube / Instagramで旅の美しい瞬間を切り取る映像を発信中 全国各地のツーリング経験から生まれた”撮影&編集”ノウハウを公開しています
記事URLをコピーしました