バイクツーリング動画のBロール撮影 | 「余白」を足してワンランク上の仕上がりにする方法【2025年版】

あなたのツーリング動画がなんとなく「素人っぽく」見えてしまう原因は「余白がないこと」かもしれません
どんなに良い景色を撮っても、情報が詰まった映像ばかりでは、視聴者は途中で疲れてしまいます。
例えば、多くの人が作る「出発→絶景ロード→ランチ」という1日の流れを追った動画。
これをただ繋ぐと、『エンジン始動→走行→休憩→走行→ランチ』と、まるで旅程表を早送りで見せられているような、単なる“行動報告”になってしまいます。
せっかくの旅の「楽しさ」や「空気感」といった感情が入り込む隙間がなく、事実の連続という情報の多さに、視聴者は共感する前に疲れてしまうのです。
ではどうすれば視聴者を疲れさせず、見応えのある映像にできるのか?
それは「余白」を作ることです。
映像における余白とは「Bロール」を挿入すること。
この記事では、あなたのバイク旅動画を「ただの記録」から「見応えのある映像」へ昇華させる、Bロールの考え方と具体的な撮影テクニックを解説します。
Bロールとは?映像における「余白」
動画編集の世界では、映像素材を大きく2種類に分類します。
- Aロール: 動画の主役となる映像。走行シーン、ライダー自身が写っているシーン、ハイライトとなる絶景など、ストーリーの根幹を成す部分です。
- Bロール: Aロールを補足する映像。メインストーリーの合間に挟み込むことで、文脈を伝えたり、感情的な深みを与えたりする「脇役」の映像です。
雑誌のデザインで、文字や写真の周りに意図的に「余白」が作られているのを見たことがあるでしょうか?あの余白があるからこそ、私たちは情報がスッと頭に入り、洗練された印象を受けます。
映像におけるBロールは、まさにこの「余白」と同じ役割を果たします。走行シーンという情報の詰まった映像の合間に、ホッと一息つけるような情景カットを挟むことで、視聴者は疲れずに動画の世界に没入できるのです。
なぜBロールが重要なのか?
Bロールで映像に「余白」を作ることで、具体的にどんな効果があるのでしょうか。
効果1:映像に「深み」が生まれる
Aロールを繋げただけの動画では、「○○にツーリングに行った」という事実しか伝えることができません。適度にBロールが含まれた動画では、ツーリングに行って何を見て何を感じたか。という感情表現をすることができるため、映像に深みが生まれます。
例えば、「古いトンネルを抜けた」というAロール(メイン映像)があったとします。 それだけだと「トンネルを抜けた」という事実しか伝わりません。
しかし、その合間にこのようなBロールを挟むとどうでしょう?
- トンネルの壁から滴る水のアップ
- 出口の先に広がる、まぶしい緑の木々
視聴者はその映像をヒントに、「暗くて湿ったトンネルを抜けた先の、開放感って最高だよな」と、自分の経験と重ね合わせて想像を膨らませてくれます。
Bロールは、すべてを説明するのではなく、視聴者が物語に参加するための「考えるスキマ」を作ります。この「スキマ」こそが、映像に深みを与える「余白」の正体です。
効果2:感情に訴えかける「雰囲気」を演出できる
言葉やナレーションには限界があります。 「最高の夕日だった」と100回言うよりも、夕日に照らされてオレンジ色に輝くバイクのタンクを3秒間映した方が、その感動は雄弁に伝わります。
このようにBロールは、言葉では表現しきれない「雰囲気」や「感情」を、映像の力だけで伝えることができます。
- 過酷な雨の走行 → ヘルメットのシールドを流れ落ちる雨粒
- 休憩中の安堵感 → コーヒーから立ち上る湯気の向こうで、静かに佇む愛車
- 旅の終わりの達成感 → 泥で汚れたタイヤと、夕日を浴びる自分の影
嬉しい、楽しい、大変だった、寂しい。そうした旅の感情をBロールで表現することで、視聴者はあなたの旅を「追体験」し、より深く感情移入してくれるのです。
効果3:編集のリズムが格段に向上する
Aロールばかりの映像は、どんなに景色が良くても単調になりがちです。視聴者は刺激に慣れてしまい、集中力が途切れてしまいます。
Bロールは、音楽における「休符」と同じ役割を果たします。
疾走感のある走行シーン(Aロール)の合間に、風に揺れる木々の葉(Bロール)を挟む。すると、視聴者はそこで一度フッと息をつくことができます。この緩急のリズムが、視聴者を飽きさせず、次の展開への期待感を高めてくれるのです。
また、編集面でも大きなメリットがあります。 Aロールの不要な部分をカットすると、映像が急に飛んだように見える「ジャンプカット」が起きがちです。そんな時、カットした繋ぎ目の上にBロールを被せるだけで、プロが編集したような、非常にスムーズで自然なシーンの切り替えが可能になります。
【実践編】すぐに使える!バイク旅のBロール撮影アイデア集
Bロールの重要性は分かったけど、「いざ撮るとなると、何から撮ればいいか分からない…」となりがちですよね。
ここでは、次のツーリングからすぐに使えるBロールの撮影アイデアを、4つのカテゴリーに分けてご紹介します。 これを「撮影ネタ帳」として、ツーリング前に眺めてみてください。
① バイクのディテール
ツーリングの主役であるバイクの映像は、全ての場面で使える万能Bロールです。普段は注目しないような細部にこそ「物語」が宿っています。
- エンジン始動でブルっと震えるミラー
- メーターの始動アニメーション
- 朝日や夕日をキラリと反射するタンク
- 寒い日にエキゾーストから出る白い排気
- 雨に濡れるエンジンやエンブレム
② 旅のプロセス
移動や休憩といった、目的地以外の「過程」にも撮影チャンスは眠っています。
- コンビニ休憩中のバイクを背景に、コーヒーの湯気
- 道の駅の看板と、道路を行き交う車
- 特徴的な木や草花
③ 旅先の情景
メインの絶景だけでなく、その土地の「空気」を切り取ることで映像が豊かになります。
絶景+Bロールでその場の空気感まで伝えることができます。
- 自然: 木漏れ日、川のせせらぎ、風に揺れるススキの穂、岩に砕ける波しぶき
- 街並み: 神社の鳥居、古い町並みの電灯、路地裏の猫、踏切の遮断機
- 音: 川の音、鳥の声、虫の鳴き声、お寺の鐘の音(映像だけでなく「音」も立派なBロールです)
【ワンポイント・アドバイス】 最初から全てを撮ろうと意気込む必要はありません。まずは「今回のツーリングでは、バイクのディテールを3つ撮ってみよう」というように、テーマを決めて意識するのがおすすめです。
Bロール撮影のコツ|Aロールとの違いを意識する
Bロールのアイデアが分かっても、いざツーリングに出ると走ることに夢中になってしまい、撮り忘れてしまう…ということも少なくありません。
Aロールが「旅の流れの中」で自然に撮れる映像だとすれば、Bロールは「旅の途中で意識的に立ち止まる」ことで撮れる映像です。ここでは、その「立ち止まり方」のコツを4つご紹介します。
コツ1:「気になったら、すぐ停まる」を習慣にする
多くのライダーは、一度走り出したら次の目的地や休憩所までノンストップで走りがちです。しかし、魅力的なBロールの多くは、その道中にこそ眠っています。
「お、今の景色いいな」 「面白い形の建物があったな」
そう思っても、「後でいいや」「キリのいい所まで走ろう」と考えてスルーしてしまうと、その瞬間は二度と戻ってきません。
Bロール撮影で最も大切なのは、何かを見つけるたびにバイクを停めるフットワークの軽さです。「撮りたい」と思った瞬間にすぐ停まることを習慣にしましょう。
Bロール撮影を意識すると、草や花、地域特有の建物など、普段は素通りしていた旅のディティールに注目できるようになます。
これは単なる撮影の時間ではなく、普段は見過ごしてしまうような旅のディテールに目を向け、深く味わう時間にもなるはずです。
コツ2:同じ被写体も「寄り」と「引き」で撮る
編集の際に表現の幅を大きく広げてくれるのが、画角のバリエーションです。同じ被写体を撮影する時も、最低2つの画角で撮っておくことを意識しましょう。
例えば、休憩中にコーヒーを撮るなら、
- 引き(ワイド)の画:バイクやテーブル、周りの景色まで含めて、状況がわかるように撮る。
- 寄り(クローズアップ)の画:カップから立ち上る湯気や、水面に映る空など、ディテールを切り取って撮る。
たったこれだけでも、編集時に「引きの映像で状況を見せた後、寄りの映像で温度感を伝える」といった、プロのような演出が可能になります。編集時の自分を助けると思って、バリエーションを撮りためておきましょう。

コツ3:迷ったらスローモーションで撮る
日常の何気ない瞬間を、一気にエモーショナルな映像に変えてくれる魔法がスローモーションです。最近のアクションカメラやスマートフォンなら、フレームレートを60fpsや120fpsに設定するだけで、誰でも簡単に撮影できます。
特に、以下のような動きのある被写体はスローモーションと相性抜群です。
- コーヒーから立ち上る湯気
- 水たまりをバイクが駆け抜ける際の水しぶき
- 風にそよぐ木々やススキの穂
スローモーションで撮影した素材は、後から編集で通常速度に戻すことも可能です。「ここは印象的なシーンになりそうだな」と感じたら、迷わず高フレームレートで撮影しておくことをおすすめします。
コツ4:「音」も忘れずに記録する
映像のクオリティを大きく左右するのが「音」の存在です。Bロールは映像だけでなく、その場の「環境音」も立派な素材になります。
- 静かな林道での、鳥のさえずりや風の音
- 渓流沿いでの、川のせせらぎ
- 田舎の風景に響く、踏切の警報音
こうした環境音をBロールの映像に被せるだけで、視聴者の没入感は劇的に向上します。
撮影の際は、カメラを回しながら数秒間黙って、マイクに現地の音を収録させましょう。
いいマイクを買う必要はありません。最近のiPhoneはマイクも非常に優秀なので、十分な音質で録音できます。
まとめ:Bロールは、旅を深く味わうための「余白」
今回は、ツーリング動画を「ただの記録」から「見応えのある作品」へと変える、Bロールの重要性と撮影のコツについて解説しました。
Bロールとは、単なる「脇役の映像」ではありません。それは、映像に感情の深みを与える「余白」であり、視聴者を飽きさせない「休符」です。そして何より、それは旅の空気感を伝えるための最も強力なツールです。
高価な機材は必要ありません。大切なのは、「Bロールを撮ろう」という意識を持ってバイクを停め、周りを見渡してみること。
- 「このコーヒーの湯気、美味しそうだな」
- 「ヘルメットについた雨粒が綺麗だな」
- 「風でススキが揺れる音が心地いいな」
そうやって普段は見過ごしてしまうような小さなディテールに目を向けること自体が、あなたの旅をより豊かで味わい深いものにしてくれるはずです。
次のツーリングでは、まずはお気に入りのBロールを3つだけ撮ることを目標にしてみませんか? その数秒間の「余白」が、きっとあなたの動画を、そしてあなたの旅そのものを、もっと特別なものに変えてくれるはずです。