
はじめに
バイクツーリングで見た景色や、感じた空気感。
その瞬間は鮮やかに心に焼きついているのに、カメラで撮った映像はどこか平坦で、感動が伝わらない——。
撮るだけ撮って、見返さない。録画データだけが溜まっていき、ストレージを圧迫する。
旅で見た景色を記録したい。家族や仲間に共有したい。
そう思ってカメラを買ったのに、「ただ撮るだけ」で終わってしまうライダーは少なくありません。
しかし、ほんの少し「撮り方」と「仕上げ方」を変えるだけで、「ただの動画ファイル」が「あの日のツーリングムービー」へと変わります。
写真とは桁違いの情報量を持つ動画だからこそ、「あの時の景色」を鮮明に蘇らせることができるのです。
本記事は、バイク旅を“映画のように”残すための入門ガイド。
STEP1〜3で撮影・編集・仕上げまでをシンプルに解説します。
高価な機材や難しい技術は必要ありません。
あなたの旅を、何度でも旅できる映像に変えていきましょう。
なぜバイク旅を映像に残すのか?
エンジンをかけた瞬間から、旅は始まっている。
朝の冷たい空気、胸の高鳴り、まだ眠る街を抜けるときの静けさ——
旅先で感じた匂い、風の温度、エンジン音の響き。
それらは時間とともに薄れていきます。
写真は一瞬を切り取りますが、動画は音・動き・空気感を丸ごと残すことができます。
しかし、ただ「景色のいいところをなんとなく撮る」だけでは、あなたの心に残った旅の本質は記録されません。
なぜその瞬間を撮るのか。
誰に見せたいのか。
未来の自分にどう思い出してほしいのか。
その答えを意識することで、カメラの向け方や構図、撮るべきシーンは変わります。
「旅を記録する」のではなく、「旅を伝える」。
そのための第一歩が、“なぜ撮るのか”を考えることなのです。
僕がバイクに乗るきっかけになったのは、ある1本の動画でした。
見た瞬間に心が奪われ、気がつけば自分もバイクを買って、キャンプを始めていたー—
映像には人の心を動かす力があります。
自分が見た景色、感じた風を誰かに伝えたい。
そして、いつかその映像が誰かの心を動かすきっかけになってほしい。
その想いから、僕はバイク旅の動画を撮り始めました。

レベル分けと学び方ガイド
本ガイドは、「バイク旅×シネマティック映像」をゼロから形にするための3つのSTEPで構成しています。
各STEPは、難易度や使用する機材によって区別していますが、順番通りに読まなくても大丈夫。
気になる部分から読み進めて、実際のツーリングや編集にすぐ活かせます。
「撮っただけの動画」から「今日のツーリングムービー」へ。
まずは1本の映像に仕上げる体験から始めましょう。
編集のゴールを知ることで、撮影の意識も変わっていきます。
他とはひと味違う、「あなたにしかできない動画」へ。
アクションカメラやiPhoneでできるテクニックで映像に変化と奥行きを加えます。
SNSで共有して、反応を受け取ることも次の成長につながります。
「空気感・臨場感」まで伝わる「思わず引き込まれる作品へ」
一眼カメラや外部マイクを活用し、ハイクオリティな映像を目指します。
機材の特性を活かし、あなたの旅を唯一無二の作品に仕上げましょう。
レベル | 使用機材 | こんな人におすすめ |
---|---|---|
基礎編 | ・アクションカメラ ・iPhone | ・動画は撮るけど編集したことがない ・短いツーリングムービーを作ってみたい |
中級編 | ・アクションカメラ ・iPhone | ・見応えのある動画を作りたい ・すぐに実践できるテクニックが知りたい |
上級編 | ・ミラーレスカメラ ・動画編集PC | ・引き込まれるような映像作品を作りたい ・カメラ設定、構図、光の演出をしっかりと学びたい |
実践しながら読む
短いツーリングやバイク以外での旅行、休日の外出で試すと、理解が早く定着します。
興味のあるSTEPから入る
必ずしも順番に読む必要はありません。興味があるところから始めてOK
繰り返し読む
一度読んだだけで習得できるほど簡単ではありません。読んで試して、また読んで試す。この繰り返しが上達のコツです。
基礎編:今日のツーリングを60秒に仕上げる
「撮っただけの動画」から「今日のツーリングムービー」へ。
基礎編では「撮影の考え方」と「編集の始め方」を学びます。
ツーリングから帰ってきたその日のうちに、60秒ツーリングムービーを作ることがゴールです。
短い時間で編集して1本の動画に仕上げるためには撮影時から意識するべきことがたくさんあります。
基礎編の内容を繰り返しやってみるだけで「編集を意識した撮影」が身について、毎回の動画のクオリティが上がっていきます。
「動画編集」というと、難しいソフトや高価な機材が必要なイメージがありますが、そんなことはありません。
必要なのはiPhoneアプリだけ。
まずは1本の映像に仕上げる体験から始めましょう。
編集のゴールを知ることで、撮影の意識も変わっていきます。
- 撮影した素材から短いツーリングムービーを完成させる
- 編集の流れを理解する
- 必要なカットを意識して取れるようになる
- アクションカメラで撮ったことはあるが、編集していない
- 編集したことはあるが、動画が単調で見ていて飽きてしまう
- とりあえず1本の動画に仕上げてみたい
- アクションカメラ( GoPro, Insta360など)
- iPhone(スマートフォン)
- 無料編集ソフト(iMovie, CapCutなど)
- 撮影した素材から短いツーリングムービーを完成させる
- 編集の流れを理解する
- 必要なカットを意識して取れるようになる
- アクションカメラで撮ったことはあるが、編集していない
- 編集したことはあるが、動画が単調で見ていて飽きてしまう
- とりあえず1本の動画に仕上げてみたい
- アクションカメラ( GoPro, Insta360など)
- iPhone(スマートフォン)
- 無料編集ソフト(iMovie, CapCutなど)



撮影の考え方を知る
ツーリング先で絶景を前にカメラを構えたけれど、後から見返すと「なんだか物足りない」。
そんな経験はありませんか?
多くのライダーは「景色が良い場所だけ」を撮りがちです。
けれど、ツーリングはエンジンをかける瞬間から始まっています。
バイクを走らせる音、休憩中の一コマ、仲間との何気ない会話——これらも立派な“旅の物語”です。
旅のワンシーンをあらかじめ頭に置いておく、いわば動画の絵コンテ。
たとえば――
- 出発前に荷物を積む
- エンジン始動
- 信号待ちでの何気ない景色
- 絶景ロードを走るバイクの影
こうした短いカットを積み重ねることで、たとえ60秒でも“旅の物語”が自然に浮かび上がります。
旅の流れを逃さず撮るための「絵コンテ」テンプレート。
おすすめの撮影シーンを真似して始めてみよう。

1カット10秒で短く撮る
なぜ10秒なのか?
大半のカットは編集で1〜2秒しか使わないから。
撮影は長くても1カット10秒以内。
長回しをすると、後から見返すときにどのシーンなのか分かりにくくなり、編集も大変になります。
短く切って数多く撮ることで、編集時に選べる素材が増え、見応えのある映像になります。
短く撮れば、ファイルサイズも小さくなります。
編集を始める前のファイル転送も早くなり、編集のハードルが下がります。
短く撮るための心構えや「使えるカット」を撮る簡単テクニックを紹介
これを意識するだけで、編集するモチベーションが上がります。

ツーリング60秒ムービーを作る
ツーリングから帰ってきたらその日のうちに編集しましょう。
まずはスマホアプリでOK。60秒の短いムービーなら30分で仕上げられます。
たった60秒でも、ストーリー性のあるツーリング動画が作れます。
まずは1本の動画を完成させること。
この経験が次のステップにつながります。
iPhone、スマホアプリだけで60秒動画を30分以内で仕上げる、編集の基本ステップを紹介します。
これを見れば動画編集が初めての人でもツーリング動画が作れるようになります。




基礎編で学んだ「短く撮って、1本の動画に仕上げる」ができたか確認しましょう。
- 撮影タイミングテンプレから8~12カット集めた
- 1カット10秒以内で撮れた(例外は出発・到着のみ)
- 60秒ムービー1本を完成(タイトル/書き出し/保存まで)
基礎編でよくある質問をまとめました。
わからないことはなんでも気軽に質問してください。
- 個別相談(非公開):こちらの質問フォームからどうぞ
- みんなに共有してもいい質問(公開):この記事のコメント欄へ
- 4Kで撮らないといけない?
-
4Kでなくても問題ありません。
SDカードの対応速度や容量によっては4Kでの撮影が難しい場合があります。
そのときは2.7KやフルHDで撮影しましょう。
画質の良さよりも、カットのバリエーションで魅せましょう。
- 1カット10秒だと短い場面はどうする?
-
連続性が見せ場になる場面(出発、到着時やフェリー乗船など)は必ずしも短く切る必要はありません。
また、走行中で操作に余裕がない場合も無理に細かく切らず、安全第一で撮影しましょう。
大事なのは短く撮るという意識です。
- 帰ってきてから編集する時間がありません
-
データのコピーだけでもやってしまいましょう。
帰りが遅くなったとき、疲れ果てたときはその日のうちに編集できないかもしれません。
そんな時は、アクションカメラのデータをスマホやPCに移動するだけやりましょう。
次の日の編集のハードルを下げることが重要です。
基礎編を何回か繰り返していくうちに、動画撮影、編集の流れが分かってきます。
慣れてきたら次のステップへ!
中級編:「見応えのある映像」に仕上げる
「今日のツーリングムービー」から、「見応えのある映像」へ。
基礎編で「撮って編集する」という一連の流れを経験し、
1本の動画を完成させる自信がついたら、次は“見せ方”を磨く段階です。
中級編では、同じ機材でも撮り方や構成を工夫することで、映像に奥行きや臨場感を加える方法を学びます。
- タイムラプスで時間の流れを凝縮し、旅のテンポを演出する。
- Bロールで「余白」をつくり、空気感や雰囲気を引き立てる。
- 寄りのショットでディテールや感情を切り取り、映像にメリハリを加える。
これらの要素を組み合わせることで、同じルートを走っても、映像の印象はガラリと変わります。
今ある機材をフル活用して、「見応えのある映像」へステップアップしましょう。
- 撮影バリエーションを増やし、映像に奥行きと臨場感を加える
- 見る人を飽きさせない構成やカット割りを意識できるようになる
- 同じ機材でも工夫次第で「見応えのある映像」を作れるようになる
- 基礎編の内容で動画は作れるようになったが、単調になりがちと感じている
- すぐに実践できるテクニックが知りたい
- 他のライダーの動画と差をつけたい
- アクションカメラ( GoPro, Insta360など)
- iPhone(スマートフォン)
- ミニ三脚
- 撮影バリエーションを増やし、映像に奥行きと臨場感を加える
- 見る人を飽きさせない構成やカット割りを意識できるようになる
- 同じ機材でも工夫次第で「見応えのある映像」を作れるようになる
- 基礎編の内容で動画は作れるようになったが、単調になりがちと感じている
- すぐに実践できるテクニックが知りたい
- 他のライダーの動画と差をつけたい
- アクションカメラ( GoPro, Insta360など)
- iPhone(スマートフォン)
- ミニ三脚



タイムラプスで「時間」を描く
流れる雲、動く影、暮れていく街——
時間の流れを凝縮して表現できるのがタイムラプスの魅力です。
撮影は意外と簡単で、アクションカメラやiPhoneの標準機能として搭載されています。
ツーリング中にじっと待つ必要はありません。
休憩中やお昼の時間にカメラを放置して撮るだけで、自然と“いい絵”が集まります。
- 道の駅でソフトクリームを食べているとき
- 海に沈む夕日を見ているとき
「待ち時間」にも使える映像素材を撮っていきましょう。
タイムラプス撮影の設定方法と失敗しないコツをまとめました。
ツーリングで活用できる構図や設置ポイントも紹介します。

Bロールで「余白」を作る
走行シーンや景色の映像だけでは“情報の詰め込みすぎ”で、見る人が疲れます。
そこに「余白」を生むのがBロール
Bロールとは、メインの映像(Aロール)を補う情景カットのこと。
- 道端に咲く花
- 海辺の小さな貝殻
- カフェの看板や湯気の立つコーヒー
こうしたカットは映像に奥行きを与え、見る人に旅の空気を感じさせます。
ポイントは「場面転換のつなぎ」や「休憩シーンの雰囲気づくり」に使うこと。
わずか数秒の挿入でも、映像全体がグッと引き締まります。
バイクツーリングにおけるBロールとはなにか?
空気感を伝える情景カットの撮り方とすぐに試せる撮影アイデアを紹介します。

”寄りのショット”で緩急をつける
普通に撮っているだけだと「全体を映した平坦な映像」になりがちです。
そこで、あえて「寄り」のカットを取り入れると映像にメリハリが生まれます。
- キーを回す手元
- ミラーに映る景色
- タイヤのトレッドやサイドに付いた砂や水滴
寄りのショットは感情や質感を表現し、ストーリー性を強める効果もあります。
映像に立体感と臨場感をプラスする”寄りのショット”の撮り方を解説します。
バイクツーリングで使える撮影アイデアも紹介

中級編のテクニックを60秒ツーリングムービーに落とし込み、他とは違う「見応えのある映像」に仕上げましょう。



上級編:「思わず引き込まれる映像作品」へ
ミラーレス一眼を使って「思わず引き込まれる映像作品へ」
中級編でテクニックを身につけたら、次は映像に“深み”を加えるステップです。
上級編では、同じ場所・同じ被写体でも印象を大きく変える主役の引き立て方・構図・光の使い方を学びます。
ここで身につける技術は、中級編のような「すぐにできるテクニック」ではなく、「繰り返し練習して習得する技術」です。
すぐに習得できるものではありませんが、意識して撮り続けることで必ず成果が出ます。
- 主役を引き立てるための「距離感」
- 視線を誘導する「構図」
- 映像の雰囲気を演出する「光」
これらの技術を使えば見ている人が「思わず引き込まれる」映像作品に仕上げることができます。
また、動画だけでなく写真でも重要となる技術で、習得できれば一生モノです。
- ミラーレス一眼を使い、主役を引き立てる映像が撮れる
- 基本の構図を再現性高く使える
- 光を意識した撮影で雰囲気をコントロールできる
- 中級まで”見応え”は出た。さらに没入感を上げたい
- 一眼を写真だけでなく動画でも活かしたい
- 「撮り方」で差をつけたい
- ミラーレス一眼+標準ズームレンズ
- 三脚
- 動画編集ができるPC
- ミラーレス一眼を使い、主役を引き立てる映像が撮れる
- 基本の構図を再現性高く使える
- 光を意識した撮影で雰囲気をコントロールできる
- 中級まで”見応え”は出た。さらに没入感を上げたい
- 一眼を写真だけでなく動画でも活かしたい
- 「撮り方」で差をつけたい
- ミラーレス一眼+標準ズームレンズ
- 三脚
- 動画編集ができるPC



ミラーレス一眼で主役を引き立てる
浅い被写界深度を使うと背景が柔らかく溶け、見る人の視線は自然と主役に集まります。
大事なのは“設定より距離”。
被写体に近づき、背景を離すだけで効果は大きく変わります。
- 絞り優先モードでF値を小さく設定
- 主役に近づき、背景との距離を確保
- ホワイトバランスを固定して色を安定させる
こうして生まれた“視線が迷わない画”は、ツーリング動画の中でも際立つ存在になります。
ミラーレス一眼での動画撮影方法から、
バイクやライダーを主役として映すための設定や距離感のコツを解説します。

構図で”引き込まれる画”を作る
構図は動画の“見やすさ”と“惹きつけ力”を決めます。
ただ撮るのではなく、視線の入口と出口を意識するだけで、同じシーンがまったく違う印象になります。
- 三分割構図で主役や地平線を配置
- 前景を入れて奥行き感を演出
- 道や影を使ったリーディングラインで視線を誘導
ミラーレス一眼/iPhoneどちらでも使える考え方で、基本的な構図を習得するだけで写真や動画の質が向上します。
光の演出で映像に深みを出す
光は映像の雰囲気を左右する最も大きな要素です。
時間帯や光の向きを意識すると、同じ場所でもまるで別の場所のように見せられます。
- 逆光で輪郭を浮かび上がらせ、ドラマチックに
- 順光で色や形をくっきりと表現
- サイド光で陰影を強調し、立体感を出す
朝夕のゴールデンアワーや曇天の柔らかい光も、それぞれ異なる魅力があります。
光を味方につけて映像の雰囲気を仕上げましょう。



よくある質問
- Q1. 風切り音は完全に消せますか?
-
結論:完全除去は難しいですが、実用レベルまで下げられます
- 風防スポンジ+マイク位置調整…内蔵マイクからの直風を遮断し、音声のピークを抑制
- ワイヤレスマイク(DJI MIC2など)をベルト装着…風の影響を受けにくい位置で録音
- 編集でのノイズゲート設定…DaVinci Resolveなどで低音域ノイズをカット これらを組み合わせれば、「ボーボー」から「走行音と会話が聞き取れる」レベルに改善可能です。
- Q2. Osmo Action 4のタイムラプスでバッテリー切れしないコツは?
-
結論:タイムラプスはバッテリー消費が激しいので、切れる前提で対策しよう。
- 撮影前にフル充電&予備バッテリーを用意
- 間隔設定を広めに(例:2秒→5秒)してフレーム数を抑制
- 解像度を「4K→2.7K」に落とすと消費電力が減少
- 風防ハウジングやフリップスクリーンを閉じるなどモニターOFFにして待機電力を節約 これで1泊2日のツーリングでも安心して撮影できます。
- Q3. ミラーレス一眼導入に必要な予算はどれくらい?
-
ミラーレス一眼のカットをどれくらいの割合で差し込むか?によって必要な機材が変わります。
- エントリーモデル+キットレンズ:約15〜20万円(Sony α6400+16–50㎜など)
- 中級モデル+便利ズーム:約25〜35万円(Sony α7 C+24–70㎜ F4など)
- 本格モデル+シネマレンズ:約40万円以上(GH6+12–35㎜ F2.8/SIGMA Cineなど) 上記に防振マウント+防滴ハウジング(2〜3万円)、予備バッテリー・大容量SD(1〜2万円)を足すと、合計20〜45万円程度を見ておくと安心です。